景の海のアぺイリア レビュー

 どもども。前置きもほどほどにセンヤです。

 そろそろ日常が忙しくなりつつもガッツリやりこんだ今回レビューするゲームはこちら。

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 シルキーズプラスDOLCEさんの「景の海のアぺイリア」です。景をひかりと読むのはこの作品で初めて知りました。エロゲで漢字、学んでいこう。

 これは有名な作品ですね。近年最も評価されたエロゲの一つと言っていいでしょう。期待値マックスでやっていきます!ました!

 

 

あらすじとか(公式サイトより引用)

 名前も顔も居場所も知らない。

 実在するかさえ分からない。

 お前を必ず見つけ出す━━━

『このメールは未来から送信されている』

 2045年冬。双葉学園萌えるAI研究会に所属する桐島零一は、偶然にも自我のある人工知能アぺイリアの開発に成功する。

 触れてみたい、とパソコンの中の彼女が言う。

 零一はAI研究会の部員たちと共に、デジタルの彼女に触れる方法を模索する。

 そしてアぺイリアの機能を使い、完全没入型VRMMO【セカンド】を作った。

 剣と魔法、科学の融合したその仮想世界は、第二の現実で、彼らは馬鹿騒ぎをしながら冒険を始める。

 だが、【セカンド】は制御の利かない危険なゲームだった。

 仮想世界に囚われたアぺイリアを救うため、零一たちは命がけでログインするのだが......

 自我を持った人口知能と彼女を開発した零一。

 そしてその仲間たちが贈る、恋と青春の科学冒険ファンタジー

 ━━━やがて彼は、一つの仮説に辿り着く。

 アぺイリアを奪おうとしている、何者かの存在に。

 

ネタバレなしの感想

シナリオ     A     ミスリードと反転を重ねる緻密な物語

キャラクター B+   アぺイリアはポジティブです。あとシンカー

CG          B+   質は高いが立ち絵との差異が少し目立つ

音楽     B      数が少ないような印象。ミスマッチなシーンが多かった

総合評価   B+    良く出来たシナリオ。ただ、好みじゃなかった

 

 悪くない!いや面白い!本当に面白かったんです。ただただ好みじゃなかった。

 常に先が気になる展開の連続で、テンポは最悪ながらも一切だれず。CGや演出もかなり頑張っていたし、魅力的なキャラクターも多い。結の部分があっさり過ぎる点を抜けばほぼ文句なしとも言える。でも、私の好みじゃなかったんです。それだけ。

 SF×下ネタ×タイムリープ。少しでも興味を持ったのなら、体験版をプレイしてみてください。後悔はしないです。

 

ネタバレあり感想

共通 B+

 なぜかあんまりうまく入り込めませんでした。

 面白くなかったわけじゃないです。自分達で作ったゲームがデスゲームになるという展開もワクワク感があって良いですし、AI、VR、クローン、タイムリープ量子力学とSF設定てんこ盛りなのに上手い塩梅で調和がとれているのも凄いと思います。シンカーとの頭脳戦もお互い切れていて緊張感がありましたし、予想外の展開ばかりでだれることもありません。特に物語における障害の置き方が上手く、常に先が気になるような作りになっている点も良い。下ネタ全開なバトルも下らな過ぎて笑える。中には感心するレベルのハイセンス下ネタもあったり。ハイセンス下ネタとは?

 それでもなんというか、胸を張ってめちゃくちゃ面白いと言えない自分がいます。全体的に「ぼくのかんがえたさいきょうのおはなし」を見せられている感が強いのが原因かなあ。シナリオに感情的な肉付けをしていないようなイメージ。主人公が浮世離れした頭の回転しているせいで、シナリオに動かされている感が強いです。特に何のバックボーンもない普通の人間のはずなのに、あまりにも有能すぎる。学生らしい若さや甘さが全然ない。ヒロインやサブヒロインたちも、命が関わっているとはいえあっさり身体を許すし。ブックマンもノータイムでおちんちん出しやがる。もう少し葛藤があってもいいと思いませんか?確かに絶印するしかないとは思うけどさあ...あまりにも合理的すぎないか?

 私は感情で動くキャラが好きです。完全に正解とは言い切れない行動を、それでも選択してしまう未熟なキャラを見ると、血の通っているのを感じます。この作品のキャラはあまりにも合理的すぎた。誰も不正解を選ばない。結果的に失敗だったとしても、常に現状における最適解を全員が出している。シナリオに、感情優先の進行が殆どないんです。だからどのキャラも記号的に感じてしまい、結果的にただ「面白いシナリオ」を見せられている気分になる。「物語」を読んでいる気がしなかったです。これだけ多くのギミックを盛り込んだ作品をテンポよく進めるには、キャラを有能にさせるしかないのでしょうけれど。

 つまりはまあ、単純に私の好みじゃなかったってことです。お話の面白さだけならA+でもいいのかもしれない。

 ヒロインはアぺイリア>ましろ>三羽>久遠の順で好きです。アぺイリアが頭一つ抜けて可愛い。

 

三羽ルート B+

 ツンツンツンデレ。ツン成分がかなり強い妹ちゃん。

 正直三羽はそんなに好きではないですね...。何事も否定から入るタイプの子で、見ていてあんまり気持ちのいいキャラではなかったです。けど、読み進めていくうちに慣れていって、素直に可愛いと思えるようになりましたね。まあ、思えるようになったころにはお話が終わったんですけど...。

 テーマは「実存」とか「生きるとは?」とか。本質に囚われてはいけない。アぺイリアはAIかもしれないけれど確かに生きているし、三羽はクローンだけど零一の妹でもある。そして、三人は血が繋がっていなくても確かに家族だった。大切なのは血のつながりだとかデータの集まりだとかそういう本質的なものではなく、自分達がどう思いどう生きていきたいか。そういうお話でした。三羽の母はそれに気付けなかったんですね...。最後まで自分の娘であることにこだわっていました。

 クローンものの物語を読んでいてちょっと考えることがあります。法律でクローン製造を禁止するのは勿論ですが、それに加えて「クローンに対する保護」を法律で制定するべきではないだろうか、ということです。

 法律は完全な拘束力足り得ないのは現代を見ても明らかです。いくら厳罰化したって、殺人は絶えませんし薬物取引は横行しています。クローンだって、法律で縛ったところで水面下で作る人が出てくるでしょう。絶対に。

 例えば薬物中毒者が逮捕された場合、薬物依存症からの回復に向けた治療や支援を受けられます。それと同じです。アフターケアが必要です。クローン犯罪が起きた場合、産まれてしまったクローンに対するサポートが必須でしょう。そしてそれを明文化することが必要です。自分がクローンであると名乗りを上げられるように。クローン製造は法律で禁止したのだからクローンが産まれることは想定していない、じゃ済まされないのです。この手のクローンものの悲劇にとどめを刺しているのは、法整備をしない社会だと思いますね。とまあ、SFに何言ってんだという考察を挟んでしまいました。すみません、ここは景の海のアぺイリア三羽ルートの感想です。

 

ましろルート B+

 やばばな後輩系女の子。なんというか...おっさんが考えた若者みたいなキャラしてる

 個別ルートはどれも発生する強制クエストが違うみたいですね。ルートごとに異なる駆け引きが展開されるので飽きない楽しさがあります。対戦カードも色々分けられているようですね。まあ、主人公のバトルは誰相手でもノリが変わらないですけど...。自分のフィールドに引き込めたら勝ちというボーボボみたいなバトルしてる。

 テーマは勇気ですね。自分の生き方の枠から一歩踏み出す勇気。最初は自己否定してばかりで臆病だったましろですが、最後には自分の身を投げ出してまで零一を助けようとする勇気を見せた。ましろの成長が感じられる良いお話でした。主人公の生き方を否定しない考え方も素敵。

 個別はラストでいくつかの謎が明かされていくようで、言ってしまえばそれだけが個別シナリオの本筋における価値の全てなんだと思います。個別で情報を小出しにして、グランドルートで全て回収してゆく構成。要は布石ですね。なんであんまり語ることもなかったり。いや、面白いんですけどね。

 

久遠ルート A

 中二病系幼馴染なお姉さん。

 お通夜の日にくっついてイチャイチャするのはどうなんだ...?いや、本人たちがいいならいいんですけどね。素直に祝福できない自分がいる。

 ラストバトルの零一はサードの身体なのに何で死んだんだろう?元気な身体が使えるんだから、ダカーポも使えるのでは?とか思ったものの、まあ細かいことは考えないようにします。零一が死んでいる間のやりとりは凄く良いシーンでしたしね。

 このルートは一番人間賛歌みたいなお話でしたね。論理的な思考では割り切れない不合理さこそが人間の持つ唯一性であり、最も尊いものであるという話でした。

 よくよく考えれば、アぺイリア自体がスワンプマンに近いです。雷によって生まれるというあたり、わざと寄せているようです。どのルートでもアぺイリアが作られますが、各ルートで作られたアぺイリアは全て同一人物だと言えるでしょうか?作り方も記憶の受け継ぎ方も何もかも同じですが、どのルートでも、ルートが始まってから作られているんです。これはスワンプマンと同じ構図になります。しかし、私は全てのアぺイリアが同一人物だと思っていますし、実際全てのアぺイリアを同一視していました。何故かって言われると難しいですが、強いて言うならば「同一人物であってほしいと思っているから」でしょうか?こういう感情に任せた不合理な思考が出来るということが、人間と自我を持たないAIとの最大の違い。

 ぶっちゃけ言うと久遠はそんなに好きなヒロインではなかったのですが、一番感情を揺さぶられたルートでした。やっぱり感情が表に出るようなお話が好きですね。

 

アぺイリアルート B+

 つよつよAI系ヒロイン。アぺイリアにオーナーと呼ばれたいだけの人生でした。

 展開が目まぐるしく変わってゆくのでついていくのが大変だった...。凄く具体的に仮説を説明しては全く違う回答が提示されるの繰り返しだったので、もう何が本当で何が間違いなのかが分からない...。いやだいたいは分かったんですけど、全容を理解できた自信はないです。

 目が離せない展開が続いて大変面白かったのですが、壮大なスケールの物語にしてはかなりあっさりと終わったので、正直拍子抜けしました。これって、ものすごい低乱数を引いてしまったっていうお話ですよね?ファーストがあのままならまたアぺイリアが生まれるのでは?というかアぺイリアネットワークはどうなった?零一たちはどこに住んでいるんだ?色々放り投げて終わったような気がするんですけど...。

 このルート一番の見どころはやはりシンカーとの決着でした。最後の瞬間だけは真に零一になれたシンカー...かなりグッとくる最期だった...。この作品で一番好きなキャラでした。ところでシンカーの能力のコストって何だったんだろうか?詠唱?いまいちわかりませんでした。

 結局この作品はスワンプマンのお話でした。現実を限りなく忠実に再現したファーストだって、スワンプマンの一種だと言えるでしょう。私たちが今いるこの世界だって、本当に仮想現実ではないと証明できるものは何もない。けれど、私たちはこの世界で生きているのだし、私たちにとってはこの世界だけが唯一の現実。今いる世界で自分らしく生きること。それが大事なのだと思わされるお話でした。

 

総評

 面白かった。けど、話の作り方が私好みではなかった。それに尽きる。

 針の糸を通すような緻密なシナリオ設計は確かに凄まじいものがあります。ここまで繊細なお話は見たことがないですし、これだけ好き放題しながらしっかり技術特異点というテーマを一貫して描いていた点も良かった。けれど、シナリオに血が通っている気がしなかった。

 結局零一があそこまで賢かった理由付けはなかったですよね?一介の学生がたどり着ける知性の限界を越えてます。零一はシンカーシステムを使っていないのにシンカーと対等の頭脳戦してるのはおかしくないですか?零一の行動にはライターの影が見えてしまって、素直に魅力ある人物とは思えませんでした。お話を動かすために都合よく賢くなっているような感じ。

 まあ色々言っちゃってますけど、面白かったのは間違いないです。私の好みじゃなかっただけ。本来ならA+つけてもいいくらいにはエンタメ全開でした。

 

まとめ

 いよいよ卒論制作が本格化してきました。夏休み中ずっとサボっていたツケを今払わされています。しんどい...。

 来月には入社式だし。歴戦の猛者みたいな顔した父が「この先(業界)は地獄だぞ」ってアーチャーみたいなこと言って脅してくる。遅いよ!今更言われても何もできないよ俺には!まあ、いいんですけどね。仕事なんてどうでも。

 次は多分、「Rewrite」をやるかなあ。ちょっと気になってるんですよね。卒論もあるので、当分は更新ペースが落ちると思われます。ではでは。

エロゲにおけるメーカー買いについて

 早速表題を否定することになるが、私は基本的にメーカー買いというものをしない。メーカーで買うエロゲを決めることに意義を感じないからだ。

 そのゲームが面白いかどうかを決めるのは、シナリオライターにかかっていると私は思う。メーカーは作品の傾向をある程度決めるだけであって、全ての作品が同じ水準の面白さを保っているとは考えがたい。

 例えば、サガプラネッツが良い例だろう。「はつゆきさくら」が面白かったからといって、サガプラの別作品を買っても期待には応えられないだろう。「はつゆきさくらの面白さ」を求めるなら新島夕の作品を買えばいい。はつゆきさくらを作ったというだけでサガプラは良作メーカーだと判断するには早計である。その作品のお話を作ったのはサガプラネッツではない。新島夕だ。

 ただ、メーカーとしての個性が強い場合は別だとも思う。例えばSMEEは恋愛を主軸に据えたメーカーであり、ライターが違うからとてそこに対する期待を裏切られることはない。

 私は基本的にシナリオライターで買う作品を決める。私がゲームに求めるのは「面白いシナリオ」だからだ。メーカーで買う作品を決めることは殆どない。私がメーカー買いをするのは、そのメーカーに好きなライターが所属していて、そのメーカーの存続を応援している場合だけだ。

 脳死でメーカー買いをしている人は一度そこらへんを考えたほうがいいのでは?というだけのお話でした。

眼鏡ヒロインについてのどうでもいいこと

 一昔前の━━といっても15~20年ほど前のことだが━━エロゲにはかなりの高確率で眼鏡ヒロインがいる。最近プレイした「遥かに仰ぎ、麗しの」にもいたし、多分探せば無限に出てくる。眼鏡ヒロインが流行った時代があったらしい。

 しかし近年では眼鏡ヒロインというのはすっかり姿を消した。ここ数年のエロゲで眼鏡ヒロインを見た記憶が無いレベルで消えた。たまにいても、当たり前のように不人気。ヒロインの属性としてはマイナーに属するものへと変化したのだ。

 眼鏡属性が受け入れられなくなった原因は、時代の変化にあると思う。まあそれしかないし当たり前だが。

 私は眼鏡ヒロインが苦手だ。なぜなら、私も眼鏡をしているから。同族嫌悪とかそういう意味ではない。常日頃から眼鏡と共に生活している私にとって、眼鏡とは「生活に必要な補助具」である。決して「自分を着飾るための装飾品」ではないのだ。眼鏡は、私にとってはプラスの属性にはなり得ない。アクセサリーとして見られないからだ。

 例えば、聴覚を補う補聴器は属性になるだろうか?車いすは?義手義足義眼は?入れ歯は?当然ならない。これらに対して萌えを感じることなんてできない。だってこれらは萌えを感じるためのものではないから。人が生活するために必要なものだから。眼鏡だって同じだ。何が違う?視覚を補う補助具である眼鏡と、聴覚を補う補助具である補聴器に違いなんてないだろう。等しく補助具だ。もし補聴器や車いすをアクセサリーとして見られる人がいるなら、その人にとっては属性足り得るのだろう。でも私は無理だし、多くの人が無理だろうと思う。

 時代の変化というのは、つまり眼鏡をかける人が増えたからということを指している。眼鏡をかける人が増えたということは、それだけ眼鏡を補助具として利用する人が増えたということ。私のようにアクセサリーとして見られなくなる人も多いだろう。結果として眼鏡ヒロインは淘汰されることになったのだ。

 要は私は眼鏡が好きじゃないんだ!ということ。それだけを言いたい文章でした。

ストゼロを飲んで

 先日、酒を飲んだ。人生初ストゼロ。どうせならと思い大きめのサイズのものを買った。

 で、まあ案の定酔った。目の焦点はぶれるし、浮遊感で足元はおぼつかないし、ぐったりしていつもより長く寝た。そして気持ち良かった。とはいえ泥酔というレベルではない。私は酒飲みではないけど、アルコールに強い両親の血故か、決して弱いわけではなかった。だから基本的に一缶程度の酒なら酔わない。けど、さすがにストゼロは酔った。

 

 なんとなく思った。きっと世の酒飲みさんはあの酩酊感が欲しくて酒を飲むんだなあと。いやそんなの当たり前なのだけど、あの時初めて実感をもって理解した。酒飲みは正直理解できない存在ではあったのだが、少しあの人らの気持ちが分かったような気がする。繋げて、喫煙者の気持ちも少し理解できるような気もする。

 あの何もかもどうでもよくなるような幸福感。なるほど確かに気持ちの良いものだった。あれを味わうためなら、私もきっとまたストゼロに手を出すのだろう。既に、次は三ツ矢で割ってみてはどうだろうとか、もう少し度の強い酒はないのだろうかとか、考えてしまっているのだから。やはり酒など飲むべきではなかった。味を知るべきではなかったな。

 

 創作では度々、酒は幸せの象徴として描かれたりする。エロゲだとサクラノ詩とか。ワンピースだって、章の終わりには宴を開いて酒を飲んでいる。他にも多分沢山ある。

 けど、酒って幸せなだけじゃない。飲みすぎると気分が悪くなるし、そもそも身体に負担をかけるものだ。酒は、自分を傷つけながら飲むものなのである。その代償として一時の幸せを得る。

 酒、というか幸せの自虐性とでもいうのだろうか。マゾヒズムかな?自分を傷つけるというのは、実は気持ちいいものらしい。よくよく考えると不思議なものだ。「自分を傷つける行為」は「気分が悪い」と繋がっていないということなのだから。

 私は怪我をするのが嫌だ。痛いし、痛いということは気分が悪くなるということだから。つまり、私の中では「痛い」と「気分が悪い」は繋がっているはずなのだ。だったら、傷つけた先には痛みがあるのだから、幸せにはなりようがないように思える。一体、どこで幸せは生じているのだろう。

 多分、傷つけるという行為自体が幸せを生むんだと思う。行為の結果得た「痛み」には大した意味がない。自分の意志で、自分を傷つける。それ自体が幸せを生むのだ。何で幸せが生まれるのか。それは多分、自分を傷つけるという行為が「いけないこと」だから。そして、やっちゃいけないことをやりたがるのが人間だから。だから気持ちがいいし、幸せになる。

 

 まあそんな感じのことを考えた。ストゼロの入って抜けた頭の中で。だからどうということもない。ただそうなんだなと思っただけ。理論が破綻しているかもしれないし、詰め切れていないかもしれない。でもそう思った。

 次はいつ酒を飲もうかな。またストゼロを飲みたい。ストゼロじゃなくてもいい。とにかく酔える程度には強いお酒が飲みたい。酔わないと、お酒を飲んだ気がしないものな。

遥かに仰ぎ、麗しの レビュー

 こんちゃーす。高校時代の黒歴史がヤク中レベルでフラッシュバックするセンヤです。純粋に死にたくなる。このブログもいつかその手の思い出になるんだろうなあ(遠い目)。

 今回レビューするのはこちら。

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 名作と名高いあの有名なPULLTOPさんの「遥かに仰ぎ、麗しの」です。

 前からずっとやりたいと思ってたんですよね。で、セールだったので買ったれと思い手を出した次第です。

 

 

あらすじとか(Wikipediaより引用)

 凰華女学院分校に新任教師として赴任することとなった主人公と学院生たちとの交流を描く物語である。凰華女学院はいわゆるお嬢様学校であり、分校の学院生は本校から途中転入してきた本校組と、分校に直接入学してきた分校組に分かれ、制服や寮が両者で異なる。学院は全寮制となっており、主人公が本校系の寮と分校系の寮のどちらに入るかの選択で物語は大きく分岐する(メインヒロインの6人は本校系・分校系で3人ずつ分かれ、寮を決めた時点で、内3人は攻略できなくなる)。

 本校系と分校系ではシナリオライターが違うので雰囲気がかなり違い、整合性も二の次となっている。

 例えば、本校系のシナリオでは主人公以外に各ヒロインやサブキャラクターの視点でストーリーが語られるのに比べ、分校系のシナリオでは話と話の間に次回予告が挿入され、また邑那ルートの次回予告以外はほぼ全て主人公の視点で物語が展開する。

 

ネタバレなしの感想

シナリオ     A+   最高の純愛物語がここにはあった

キャラクター A+   ヒロインだけでなく、主人公の魅力も抜群に良い

CG          A     崩れもなく可愛らしいデザイン。モブキャラにも欲しかった

音楽     A     いくつか印象的な曲がある。OPも良し

総合評価   A+   純愛ものとして完璧な本校、重厚なシナリオの分校

 

 予想の915434434534534倍は凄いお話でした。特に本校ルートが。

 特別に何か凄い伏線があるとか、劇的な盛り上がりがあるとか、そういうのではないです。日常の中で築き上げた、非常に地に足の着いた恋愛劇が展開されます。それの質が高いこと高いこと。ここには正しく純愛があります。ライターの確かな筆力によって構築されたレベルの高い日常ラブコメ。それがかにしの本校ルートです。

 分校も良い。本校とは打って変わってドラマティックな展開に溢れています。テーマとお話とHシーンが密接に絡みついていて、非常にエロゲらしいお話でした。

 一番の見どころは主人公です。人として完成されていると思うほどに完璧にかっこいい主人公です。けれどただ「主人公」という肩書に沿うだけの記号的な人物でもない。そこらへんは本作をプレイしていただければ分かるので、ぜひやってみてください。

 一言でいうなら名作です。間違いなく。

 

共通 B

 この作品、とにかく共通が短いです。なんで感想も何も書くことがあまりないですね。

 私個人の意見としては、共通はこれくらいのボリュームで良いと思っています。ヒロイン達の顔見せだけ流して、すぐに分岐。その方が個別ルートのテキスト量を増やせます。誰とも恋愛に発展しないお話を長々と続けられてもだれるだけですしね。ヒロイン達の魅力を確認してから攻略ヒロインを決めてほしいという思惑もあるのでしょうが、そういう場合は全ヒロイン攻略後にグランドルートを設けるなどして全ヒロインを攻略せざるを得ないシステムにしてしまえばいいと思っています。

 かにしのは本当に一時間にも満たないうちに分校組本校組のシナリオ分岐が発生し、その後もすぐに個別に入るのですごくテンポが良かったです。飽きずに進められました。

 共通時点では栖香>美綺>殿子>みやび>梓乃>邑那の順で好きです。世間では本校組が人気のようですが、共通時点では分校組の方が印象が強いです。

 

栖香ルート B+

 めちゃくちゃ面倒くさいなこの子!ツンデレを極めたような子。話もある意味ツンデレがテーマみたいなものですし。最高に可愛かった。

 ダメだと分かっているのにキスしたり、教師と夜な夜な密会したり、家族に捨てられて主人公しか頼れる人がいなくなったり、シチュエーション的背徳感が凄まじくてえっちでした。「好き」と言わないで行為をぶつけあっているあたりが背徳ポイント5億点。普段は毅然と構えている栖香が二人だけの時は甘えてくるのが破壊力抜群でだいぶキモイにやけ方してた。暗転した画面に映る気持ち悪い笑顔の男、誰...?私です。

 テーマは多分、「感情と理性の不一致」。「しがらみ」とか「ふるまい」と言い換えても良い。本心では美綺と仲良くしたいのに家同士の対立のせいで素直になれず、仁礼崩壊の原因を作った人と繋がりのある邑那も避けてしまう。主人公とは両想いなのに、襲われた経験からどうしても一線を越えることができない。

 この世には、感情ではそうしたくてもできない、そういう状況が無数にあふれている。そして、本意ではない行為が更にすれ違いを加速させてしまうこともある。そういう思わされるお話でした。早い話が壮大なアンジャッシュ。対話が足りなさ過ぎましたね...。散々大人の社会のどうにもならなさを描いておきながら滅茶苦茶都合の良い決着で話が終わりましたが、これも私や主人公たちが相沢家を誤解していたからなんでしょう。そう思わせるようにシナリオが描かれているのも面白いです。

 少し気になったのですが、このルートの主人公、結構屑じゃないですか?勝手に忍び込んできたとはいえ、何度も栖香の自慰をのぞき見してるし、襲いかけることも何度かありましたし...。栖香は襲われたがってる!→やっぱり違うのかな...を五千回くらい繰り返しててもはや襲いたくなる自分を肯定する言い訳にしか見えなかったです。中盤はずっとこの展開の繰り返しで中々話が前に進まなかったので、ややだれた感じはありましたね。

 

美綺ルート B

 正しいことしか言わないお姉ちゃん。共学の学校にいたら、絶対初代ポケモンの数くらいの童貞を殺してたタイプ。

 いやー、美綺も可愛いですね。天真爛漫で恥じらいすら持たなかった少女が恋を知って、初心な反応を返してくるようになるのがたまらなく可愛かった。恋人であると同時に相棒、友人でもあるという距離感が心地よかったですね。

 シナリオですが、まあ普通でした。栖香ルートで長々とやっていた桜屋敷のお話を速攻で終わらせたのは正直ビビった。テンポが良いのは評価できますが、栖香ルートのごたごたは茶番でしかなかったんだなという思いがあり、栖香ルートは何だったんだろう...というもやもやがあります。ただ、栖香と仲良くしている様子が沢山描かれていたのでそこは凄く嬉しくなりました。よかったねえ。

 栖香編が終わったあとはずっとエッチ三昧だったようですが、教師と生徒の恋愛のお話としてそれはやばいんじゃないかと思ったり思わなかったり。教師以前に大人としてそこは流されちゃダメなんじゃないか...?

 テーマは何だろう。守りたいものとか、そんな感じでしょうか?正直終盤の話の流れはよく分かりませんでした。結局老人はどこへ行ったんだ?

 それと、坂水の脅しは何だったんだろう...。もう二度と外には出られんとか匂わせぶりに言っておきながら、全然何も動かないままに学院を追放されてるんですけど...。

 

邑那ルート B+

 マジで食指の動かない眼鏡っ子。眼鏡をかけている人の15225566割は眼鏡ヒロインが苦手であるとハーバード大学の研究結果が出ています。例に漏れず私も眼鏡ヒロインが苦手な眼鏡マンです。

 このルートの主人公は輪をかけてひどい。感情で動いてばかりで短絡的な思考が多いですし、生徒になだめられるとか最悪でしょう。いい大人が何やってんすか...。無神経な言動や行動が目立って、読んでいて結構イライラさせられました。しかも結構馬鹿。散々人を一面で判断するのは良くないという事例を見せられておきながら、誰一人本性を見破ることが出来ていないじゃないですか。結局感情に理性が負けてるんですよねこの人。こんなこと言う人が悪い人なわけない!みたいな感情論で決めつけることが多いですし。もう少し賢い主人公でいてほしかった。

 世界は光の当て方で、見え方ががらりと変わってしまう。これが分校ルート全てに通ずるテーマだったのですね。どんな人だって一枚岩ではできていない。他者にとっては冷酷非道な人間に見えても、その実何か守りたいもののために戦っているだけかもしれない。人を一面だけで判断するのは間違っている。そういうお話でした。同じキャラでも、ルートによってくるくる人相が変わってゆくのが面白かったです。特に暁さんの正体に関しては結構ビビりました。この人どのルートでもそれなりに幸せな結末迎えてますよね。もしかしたら一番の成功者なのかもしれない。

 終盤の源八郎との対話シーンなどは好きです。人は光の当て方で見せる顔が全く変わる。けれど、どこから照らしたって変わらない芯の部分だって存在する。源八郎は正真正銘の怪物でしたね。

 分校ルートの集大成ともいえるルートでしたが、主人公がやや馬鹿であること以外はおおむね満足でした。

 

梓乃ルート A+

 めっっっっっっっちゃくちゃよかった.......。

 愛することを恐れた青年と、他者と関わることを恐れた少女の純愛ストーリーでした。

 まず梓乃が可愛いんすよ...。怯えてばかりいた梓乃が少しずつ表情豊かになっていくのが破壊力抜群。梓乃視点で心情が語られる場面も多く、梓乃の魅力が最大限に表現されていたと思います。あと、声が最高。溶けるわこれ。

 お話自体は実はそれほど凄い何かで出来ているわけではありません。全体的に落ち着いた進行で、学園ものにありがちなクリシェを多々扱っています。しかし、ただの凡庸な恋愛ものではない。何の飛び道具もギミックも使わないで、ただただ丁寧に変わりゆく感情と関係を紐解いていく、それだけで一級品の恋愛劇を生み出すことに成功しています。本当に凄いと思うこのルートは。

 例えば坂水先生のお話。ストーカーに襲われるヒロインを颯爽と助ける主人公という、言ってしまえばありがちなシナリオ展開です。しかし、ここに「ヒロインが主人公に痴漢冤罪を押し付けようとしていた」という事実を被せることで、自分が主人公にしようとしていたことの危うさを自覚するとともに、主人公を意識するようになるという感情の変化をこれ以上ない説得力で表現することに成功しているのです。ありがちな展開を大きく膨らませている。梓乃ルートは全編こうした質の高いクリシェで作られていて、そこが凄いのです。いやー、面白かった。

 テーマは勇気。自分の殻に閉じこもることは、人生を投げ捨てていることに他ならない。実親に捨てられた司が滝沢家に来て愛を知ったように、世界は我々の思うより少しだけ優しいのだ。でも、自分の世界に閉じこもっていてはそれを知ることができない。それは、世界を知ることを放棄することと同じで、つまりは人生をふいにしているのだ。確かに変化は怖いし苦しみを伴うかもしれない。けれど、痛みを伴いながらも一歩を踏み出す勇気が大切だ。そういうお話でした。

 

殿子ルート A

 殿子!うわああああああああああ殿子!!!!!!!!!!!!可愛いよ殿子愛してるよおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 このルートもすっごい良かった...。戦闘機制作と鷹月家の確執という二つの軸を「自由」というテーマで繋げて並行し、ラストでそのテーマが帰結する。戦闘機作りに成功し自由に空を翔ける...のではなく、失敗し墜落した司を見て殿子は自由とは何たるかを知る...。奇跡を使わないでテーマを描いているあたりが上手いです。

 「困難に際して諦めるから自由にならない。困難に際してなお、揺るがぬ意志と強い行動力を示し続ける。自由とはそのようにして顕されるものだったのだ。」良い言葉ですね。戦闘機は結局自由に飛ぶことは叶わなかった。けれどそれで終わりではない。戦闘機もろとも海に沈んだ司は泳いで戻ってくる。失敗したから諦めるのではなく、失敗してもなお困難に挑み続ける。その意志こそが自由である。

 エピローグにてかなりご都合主義的な感じでお家問題に決着がつきます。これには結構賛否両論あるみたいです。私も確かに驚きはしました。思わず「なんだそれ!?」と声が漏れた。けど、私はまぁ許容範囲内かなと。司と殿子は抗い続けたわけですし、その結果として自由を手にしたわけですから、テーマに即した終わり方だったとは思います。過程をもっと描いてほしかったという気持ちはありますが、戦いの間に何があったのかというのは少しお話からずれるところですからね...。最後まで自由というテーマで一貫させたかったんでしょう。

 殿子ルートも面白かったなあ...。このライターさん、恋愛の扱い方が凄く上手です。特別な何かがあるわけではないのに、ここまで読ませるシナリオを作れるのは本当に凄い。ちょっと健速さんの作品に興味が湧いてきてしまいました。

 

みやびルート A+

 完璧すぎてなんも言えねえ...。

 お家の問題だとか理事長としての苦悩だとかもありましたが、結局のところ、みやびが「みやび」として生きるための愛の物語でした。リーダさんとの姉妹愛、司との純愛、そして三人で築く家族愛。あらゆる愛に溢れた物語であり、それがすべてのルートでした。すっごい良かった...。

 強気だったみやびが甘えてくるようになる様子がとてつもなく可愛い。可愛すぎる。いや、可愛すぎないか?みやびやリーダさんの視点から語られる場面が多かったので、みやびの変化に確かな説得力があったのが良かったです。本当に心の底から司を愛しているのが伝わってきて、凄く感情移入してしまった。クライマックスには普通に泣いてた。

 本校組すべてに言えることですが、司の行動に確かなバックボーンが存在しているのが面白い。ともすれば偽善にすら映りかねない模範的な主人公像をしているのですが、それは家族に捨てられた経験に裏打ちされた仄暗い思想からきたもの。そこには誰にも裏切られたくないからこそ愛を与えることも受け取ることも避けてしまうという弱みを孕んでいる。だからこそ司の行動には嘘くささがなく、血の通った魅力的な人物になっているのです。そして、司の行動の節々に見え隠れする心の弱みにヒロインが寄り添うことで、真にお互いを思いやり愛し合う関係が育まれる。純愛とはこういうものなんだろうなあと思います。一方的ではなく、双方向的な関係。

 「これは僕らが大事なことに気付いたというだけの、ごくごく当たり前の物語だ。」

 この文言をもってみやびルートは終わります。そして本校ルート全てに通ずる言葉でもあります。司は真に愛し愛されることを知り、梓乃は恐れを覚悟し一歩を踏み出す勇気を知り、殿子は自由とは何たるかを知り、みやびは真に愛し愛されるべき存在を知る。これらは至って普遍的なもので、しかし彼らには欠けていた。だからこそこのお話は、「当たり前」によって作られることが必須だったのです。劇的な何かはないし、ありがちなクリシェに彩られている。この作品は、「当たり前」の日々を過ごし「当たり前」を見つける、ただそれだけのお話だったのではないでしょうか。そう思うと、何気ない日常の1シーンにさえ物語的な意義が感じられます。つくづく無駄のないストーリーだなあ。

 お互い、不安と期待を持っている者同士、時にそれをぶつけ、時にそれを笑い合い、そうして、お互いを知って生きましょう。そして、よき仲間となり、よき友人となりましょう。

 

総評

 噂以上の超名作でした。いや、本当に凄くて...。今でも私の心は凰華女学院分校に奪われている始末。

 本作は本校組と分校組でライターが異なり、お話の毛色も全く変わります。どのルートも「社会」と「個人」の関わりがテーマとなって進んでゆくのですが、本校では「個人」、分校では「社会」が主な軸となって描かれています。なので、本校組は繊細に心情を描いた人間ドラマが展開されますし、分校は家の闘争に翻弄される少女たちを描いたドラマティックなシナリオが展開されます。まあ好みによるでしょうが、私は本校組がたまらなく好きでした。本校ヒロイン三人は私的名ヒロイン史の中に刻まれました。

 思えば、司が教師であるという設定が上手かったんでしょうね。教師と生徒という明確に上下がついた関係性だからこそ、その壁を破って対等な恋愛関係になることに意味が生まれる。男だからとか教師だからとか関係なく、ただ一人の人間として愛したからこそ相手を思いやるし、ヒロインも然り。真の純愛がこのゲームにはありました。

 それと、これは本校分校どちらにも言えることですが、Hシーンに意味があるのも好印象でした。本校では愛の結実した形としてHシーンが描かれていますし、分校ではそもそもシナリオに密接に絡んでいます。ただ雑にHシーンを突っ込んだだけではなく、お話に活かしていたのが上手い。まあ、だいぶ本校組分校組でHシーンの量に偏りがありますが...。それもまあよかろうて。許そう。

 本校組の話ばかりですが、分校組もすごく良かったです。これに関しては、本校組があまりにも良すぎたというだけです。

 何気ない日常すら退屈な場面が存在せず、完璧な作品でした。純愛が見たい方や魅力的なヒロインを見たい方、そしてハイスペック主人公の気持ち良さを味わいたい方にはぜひおすすめの一作です。私的ベスト5には入ったであろう作品でした。

 

締め

 だめだ、いつも以上に何が書きたいのか分からない滅茶苦茶な駄文ができてしまった...。いつもルートを終わらせた直後に感情のままに書きなぐってから推敲する形で書いているのですが、今回はいつも以上に感情がでかくてなんかもう壊れてた。ダメだと思い後日書き直そうとするのですが、あの時の高揚感そのままのエネルギッシュな文章を消してしまっていいものかと考えてしまい。結局あまり推敲せずに書いてしまいました。改めて読み返すと分校組の時と本校組の時のテンションが違いすぎてウケる。

 そんなこんなで10日で終わらせてしまった。次は何しようかな。かにしののおかげで健速というライターさんに興味が出てしまったので、「こなたよりかなたまで」や「そして明日の世界より」をやるかもしれない。あとは単純に前々から興味のあった「この青空に約束を」とか、積んだままになっている「あかね色に染まる坂」とか。まあ長い時間をかけて全部やるんでしょうね。時間だけは有り余っているものですから。

 いつも以上に長くなって申し訳ない。では次の記事でー。

涼風のメルト レビュー

 ども。センヤです。

 今回レビューする作品はこちらでーーーーーーーーす。

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 10本1万円セールで買ったやつシリーズ、Whirlpoolさんの「涼風のメルト」です。

 ちょっと前にレビューを書いた「Pieces 渡り鳥のソムニウム」と同じメーカーさんですね。ただ、原画さんもライターさんも違うのでお話の雰囲気はあんまり似ていないかも。扱うテーマには割と似通っている点を感じますが。

 

 

 

あらすじとか(Wikipediaより引用)

 主人公、瀬川彰人の住む御代街には、古くから、土地神と精霊に守られたという伝説がある。今でこそその伝説を信じる人はいないが、その伝説に基づいて始まった土地神祭は、10年に一度、街にとっての一大イベント。今回の祭りは、瀬川彰人が祭りの神官、幼馴染の捺菜が代替わりする新たな巫女と決まり、彰人にとって、今までとは違う特別な祭りとなるであろうことは、疑いようもなかった。

 そんなある日、見たこともない生物を彰人が見かけたのをきっかけに土地神と出会い、その土地神から聞かされた話によって、彰人はこの街の真実の一片に触れることとなる。

 

ネタバレなしの感想

シナリオ     B+  個別で描かれたテーマがグランドへ収束していく優れたシナリオ

キャラクター A  幼馴染万歳!

CG          B    可愛いけど違和感のあるものも少なくない

音楽     B     印象には残らないがさりげなくお話を盛り上げる音楽

総合評価   B+   個別もグランドもシナリオゲーとして及第点な出来

 

 すごく良い!という程ではないですが、シナリオゲーとしてはまずまずの出来だったと言えます。とにかく描写が丁寧なのでお話にもいい具合に厚みが出ていました。

 ただ、長い。とにかく長い。それなりに良く出来たシナリオをもういいよ!ってくらいに丁寧に描いたお話なので、ボリュームはかなりあります。プレイする方は覚悟してください。そしてグランドまでは絶対にやってください。どうしてもきついなら、スキップしてしまうのも手かと思われます。いやスタッフの方に失礼なのでちゃんと全部読みましょう。

 

共通 B

 普通に面白かったです。としか言えないですはい。

 人物紹介と世界観の説明を軽く流して明るい雰囲気で進む、実にスタンダードな共通でした。ヒロイン達の可愛い一面も見られますし、主人公の人となりもしっかり描いてくれています。目を見張る何かがあるわけではないですが、テンポよく進むので退屈することもなく。基本に忠実で、模範的な共通だったと言えるでしょう。

 佳華がうざいという意見が多いみたいですが、私はそんなに気になりませんでした。確かに主人公たちを尾行していた辺りはどうかと思いましたけど、基本は気の強い女の子、という属性に収まる範囲で暴れていたので不快感はそんなになかったです。とはいえ見た目の問題で佳華はそんなに好きではないのですが。

 共通時点では羽衣≧捺菜>土地神>月音>佳華の順で好きです。私の大好きな属性である幼馴染を押さえつけて一番にのし上がった羽衣ちゃんがやべえ。めちゃくちゃ可愛いです。

 

羽衣ルート B+

 羽衣ちゃんと優衣ちゃんの姉妹の絆が感じられるルート。

 キャラゲーと思って読んでましたけど、結構お話も面白かったです。羽衣ちゃんとの恋愛と伝承探しを神具というファクターで繋げて、並行して進んでいったので、どちらの要素もだれずに楽しめました。溜めがやや弱くてカタルシスに欠けるところはありますが、ストレスなく読めるという長所とも言えるでしょう。全体的に緩急のついたシナリオで、構成の上手さが光るルートでした。

 あと期待通りに羽衣ちゃんが可愛い。可愛いんですが、どこが可愛かったかと聞かれると案外思いつかない。基本受け手に回る性格だったので、自分から何かをしたという記憶があんまりないですね。まぁその奥ゆかしさも魅力でしょうか。あと病人なのにセックスするのはどうかと思うよ羽衣ちゃん...。

 奇跡は想いと行動によって起こすもの。土地神様に願った結果、優衣の病気は回復したけれど、奇跡の代償として今度は羽衣が病気になってしまう。一度は失意に落ちた主人公たちだけど、神具を頼りに皆で解決の糸口を探し続け、羽衣が助かるという奇跡を授かることができた。ご都合みたいな奇跡が起きるとしても、それまでの過程には確かに意味があり、だからこそ奇跡だけに頼ってしまってはいけないのだと、そいういうメッセージを読み取りました。努力したものに与えられるのが奇跡なのです。

 

佳華ルート B+

 容姿があまり好きではない子。不快とか嫌いというわけではないけどあんまり食指の動かないタイプ。

 お話が結構面白く、ヒロインとのイチャラブよりそっちを目当てに読みました。まさか町長があそこまで外道だとは思わなかった。このルートやると他のルートでの町長の見方が変わってしまいますね。一番最初か最後にやるべきルートなのかも。

 玲於奈と関わりだしてからは常に展開が動いていてテンポが良かったですね。決着のつけ方も予想外だけど納得のゆくもので感心しました。ごまちゃんの能力がチートすぎるような気もしますが、まぁそこはご愛敬です。分かりやすい悪役がいてくれたおかげで、話に起伏がついていました。

 恵編もよく出来ていたと思います。この作品、長い時間かけて編み上げた主人公たちのドラマよりも、絆語の過去編の方が心揺さぶられますね。エロゲとしてどうなんだと思う気持ちもありますが、私はこういう悲恋や非業の死みたいな過去編が大好物なので全然おっけーです。

 一つ気になったのは、これ問題解決してなくないか?ってことです。玲於奈さんは記憶を失ったので帰っていくのは分かるのですが、町長は土地神の実在を疑ったままでしょう?だったら町長がその席についている限り、また同じことを繰り返すような気がするんですけど...。土地開発も完全に取りやめになったわけではないです。だったら、開発が再開されるときにまた土地神伝承との折り合いで悩むことになるでしょうし、そうなればまた玲於奈さんを呼んで調査させるんじゃないですか?その時もまた同じ対策をするつもりなんですかね...。町長の不祥事が発覚してその席を下ろされる、くらいはしてほしかったです。町長の企みは防いだものの、別に痛手を負ったわけではないですし...あれだけ強権的に主人公たちを追い詰めた敵に合わせる仕打ちとしては、やや物足りないものがあります。

 そもそも町長は巫女が森に入ることをどう考えていたのでしょうか?なんか知らんけど巫女は森から帰ってこないんだよなwくらいにしか考えていなかった?それは無理があるでしょう。倫理的にもアウトに近い巫女の風習を現代まで続けている理由が、「土地神の存在を信じているから」以外には考えられません。もし信じているなら、開発を進める理由がどこにあるでしょうか?超常的な力で街が発展していることを知っている町長が、土地神を森から追い出すような真似をしている理由がいまいち理解できませんでした。重箱批判ですかねこれ?割とルートの根幹をなす部分のツッコミどころだと思うのですが...。

 まぁ疑問点はどうあれ、話として面白かったのは確かです。佳華も思っていたよりは可愛かったです。

 

捺菜ルート B

 大好きな幼馴染属性ヒロイン。家が隣同士・窓を通じて部屋を行き来している・毎朝起こしに来て朝食を作ってくれる・可愛い。役満です。お手本のような幼馴染ムーブ。

 誰よりも時間を共にした相手だからこそ互いに大切に思いやっていて、その思いが「巫女の風習による関係性の変化」を前にして恋愛へと昇華する。納得のできる感情の変遷でとても好きなお話でした。幼馴染シナリオは、お互いに大切に思っているからこそ形成される優しい空気感が凄く好きです。ハラハラ感とかはないしくっついた後の関係性の変化にも乏しいものはあるけど、それでも幼馴染同士にしか作れない恋愛関係がある。

 想いは時代も距離も越えてつながっているよ!というお話。正直ボンタの能力関連は全く意味が分かりませんでした。ご都合にもほどがあるだろと言いたくなるシナリオでしたが、奈津の話は結構胸に響くものがありましたし、後味は良かったので嫌いではないです。キャラゲーとして見れば、何の後腐れもなくヒロインを祝福できるいいお話だったのではないでしょうか。いや、シナリオゲーとして見るなら論外に近いご都合具合でしたけど...。最後の最後まで他者の幸せだけを願って生きていた奈津を思うと泣きたくなる。もし予知夢に逆らっていたらもっと幸せになれた道もあったのかなあ、明人と再会できる未来もあったのかなあとか想像しだすともういけない。ああいう人の一生を書いたエピソードに弱くてなぁ...。

 というか、あんなにあっさり禁足地出られるんですね。あんまり簡単に出るもんだから拍子抜けしました。だったら他のルートでも絶対出られるでしょうけど、まあ他のルートだと近い将来精霊になって、主人公を助けてしまうでしょうしね。そう思うと捺菜以外のルートは素直に楽しめなくなる気がする...。全てのルートで捺菜が犠牲になっているってことだよね?

 

月音ルート C

 まず言いたいんだけどさあ、あの水着は何なんですか。際どいエロいのレベル越えて怖いよ。明らかにサイズ間違ってるでしょあれ。露出の多い水着とかじゃなくて一回り小さいサイズ間違って買った感じでしょあの水着は。尻完全に見えてるよね?なんですかあれは!!!!!!!!!

 このルート、主人公の行動に違和感があるんですけど私の気のせいですかね。なんかウィンクしだすしすげぇアグレッシブだしいけ好かないキャラになっているような...。ライター二人いますし、もしかしたらもう一人の方のライターさんが書いたルートなのかもしれませんね。正直違和感が凄くてお話に入り込めませんでした。

 気になったのが、告白シーン。個人的に、周りが見てる中で告白するシチュエーションが嫌いなんですよね...。告白は大事なイベントなんだから、二人だけの世界であってほしいし、二人だけがその場を知っていてほしい。そう思うのは私が恋愛未経験童貞だからですか?恋愛に純粋さを求めすぎですかね?でも、現実だって人前で告白する人はいませんよね。正直見ていて共感性羞恥起こしたのでやめてほしかったです。

 なんだかこのルートだけ色々と変だなあ、というのが第一印象でした。告白もこんなんだし、主人公はキャラ違うし、月音は天才設定が完全に消えてただの天然お嬢様になってるし...。極めつけはシナリオ。なんですかこの頭のおかしい打ち切り展開は?何も解決せずになぜか晴れやかな顔で幸せなキスをして終了...。いやいやいや、意味わかんないから!何ハッピーエンド面してるのこの人ら?何一つ解決しなかったよね?

 というか、月音のお母さんとの初対面シーンで巫女の正体を普通にばらしてしまってるんですけど、大丈夫なんですかね?確か儀式まで秘密にしなきゃだったと思うのですが...。やっぱり複数ライター故の弊害ですかね。

 

涼ルート B+

 グランドルート。個別で明らかになった謎や貼られた伏線、そして描いてきたテーマが全て収束する、正しく集大成といえるルートでした。

 前半は月音ルートの絆語で少し登場した風のお話。人の想いから生まれた風を否定するのではなく、受け入れて一つになる(溶け合う)という展開はこの作品らしい決着で良かったです。まさしく「涼風のメルト」ですね。ただ、一つになったという割にはそれ以降風らしい性格が微塵もなかったのが気になります。多少変化があってもよさそうなものですけどね...。風の見た目が好きだったので、もう少し出番が欲しかったなあ。

 後半からは秋人の過去編から始まって、彰人の呪いの話へシフトします。人の想いが伝承として今に受け継がれ、その思いを受け取った涼と彰人の物語はこれからも続いていく、という終わり方はこの作品らしくてすごく感動しました。全編通して人の優しさや想いに彩られた物語で、凄く心温まるストーリーでした。最後のご都合ハッピーエンドも、羽衣ルートで「努力したものに奇跡は起きる」と書いていたからこそ素直に納得できるものに仕上がっていました。ご都合を上手く取り込んだなあ。

 ただ、これまで描いてきた「人と精霊の共存」というテーマの決着を放棄した感は否めません。人と精霊≒自然と人間の発展は共存できるのだろうか?というこの作品の問いに対して出された答えが「最初から人と精霊は共存していたことになったよw」ですからね。つまり、共存できるだろうか?という問いかけが存在してしまっている時点で共存なんて無理だよ!と言っているようなもんじゃないですか。いやいやそんな結論でいいのか。描いてきたテーマや過程はそれなりに良かっただけに、結論部を放棄したのがもったいないです。私はこれが結論だとは思いたくないな。お互いが歩み寄ればきっと人と精霊は共存できる。そう思いたい。

 

総評 B+

なげぇ!!!!!!!!!!!!!

 いやいや長すぎるよこのゲーム...。共通+個別だけでも並のフルプライスくらいあるのに、各個別ごとにある絆語があるせいで余計に長い。ここまで長く感じたゲームはホワイトアルバム2以来でしたよ...。

 一つ一つを丁寧に描きすぎているせいでだれたように思います。過去編なんてもっとサラリと流してもいいのに、馴れ初めから何まで全ての仔細を描くもんだからやばい。ようやく終わるか→終わらんのかい!が2億回はあった。

 とはいえ、そのボリュームに見合うくらい良いお話ではあったと思います。見せ方に問題があったというか、見せすぎたのは問題ですが...。シナリオ自体は質が良いのでなんとか終わらせることができました。やってよかったと思える作品でした。

 一つ気になったのは、康介をもうすこし救ってやってほしいということですね...。ぞんざいに扱われすぎて少し可哀想でした。いいやつなのに。

 

締め

 ワクチン打ってきました(唐突)。大学で無料で打てるということだったので、モデルナを我が肉体に注入致した次第です。

 まだ一回目ですが、37度の微熱が出ました。あと打った左腕が上がらなくなった。副反応楽しんでやるぜ!みたいなノリでワクワクしてましたが、思いのほか辛くなくてがっかりしました。二回目がきついらしいのでそっちが本番ですね。

 まだまだコロナ禍収束の兆しは見えませんが、まぁ自分達にやれることをやっていきましょうじゃありませんか。具体的には家に引きこもっておちんちん触ってください。

 次回はかねてよりプレイしたいと思っていた「遥かに仰ぎ、麗しの」のレビューを書くと思います。まぁまだ買ってないんですけど。残高1万3000円なり。

あきゆめくくる レビュー

 うーす(気さくな挨拶)。 相も変わらずエロゲ三昧なセンヤです。大学四年生の最後の夏休みをエロゲだけで過ごしているわけだけど、本当にいいの?俺。

 やっとこさまた一つ作品を読み終わりました。いやー今回は結構長かった。ということで今回レビューする作品はこちらでーす。

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 前回に続きすみっこソフトさんの四季シリーズ三作目、「あきゆめくくる」。

 ちょっと「なつくもゆるる」と絵を見比べてみてください。絵の進化凄すぎないですか?ここまで変わるもんですか。ロリゲーからの巨乳ゲーという変化もあれですけど。

 これも10本1万円セールのやつですねー。多分これで半分くらいは崩しました。コスパ良すぎですねこのセール。皆さんもFANZAのセールは見逃さないようにしましょうね。

 

 

あらすじとか (公式サイトより引用)

 人工的なDNA“XNA”を組み込まれた、普通の人間とは違う能力を持つ人々が住む近未来。

 その中でも、政府から特別に危険と判断された6人の少年少女……つまり僕らは、とある都市に新設された学園に通わされることになった。

 政府から僕らに突きつけられた軟禁を解くための条件は、学園からの卒業。

 頑なに秘密とされている『ルルラン学園』からの卒業条件。
 数々の手がかりを探し出して、僕らはひとつの推測を導き出す。

 その条件とは、“ ラブコメ” すること。

 偶然女の子のパンツを見ちゃったり?
 パンをくわえた登校中の女の子とぶつかる?
 一緒にお弁当を食べたり、変な性格の妹がいたり?

 ——“ラブコメ”っていったい、なんだろう?

 人間以外の全てが同じ1日をループし続ける、狂ってしまった世界を舞台に、今世紀最初で最後の『量子力学ブコメディ』の幕が上がる!

 

 秋を繰り返した先の夢に辿り着く、その日を目指して。


 かつて、人々は闘争をした。

 『保持者』と呼ばれる人工DNA“XNA”を組み込まれた異能者達と、普通の人々の対立は、『保持者』側の敗北で終結を迎えた。
 最後の学園闘争の中心にいた人物【原島ちはや】は、その責を問われることとなる。

 隔離追放の処分を受けて辿り着いた先は、北海道の街『ルルラン』。

 量子爆弾の爆発という大事故により、全ての可能性を殺された場所。
 この街の人間は皆その形を失い、生きていながら死んでいる。
 影のような幽霊のような存在『WSP』となって、同じ時の中を延々とループしていた。

 ひたすらに繰り返される、ゴールの見えない日常。
 秘匿されている学園からの卒業条件を探して、変化を求める異能者達。

 そして目にする、ルルランの現実。
 「世界を変えたい」と願う気持ちが再び熱を帯びて、この街を救う決意をする。

 ルルランの変化に必要なものは「前に進みたい」感情であるという仮説に至り、
マンガからヒントを得たちはやは「全力でラブコメをする」ことを提案する。
 困惑しながらも賛同するメンバーは、それぞれの持ち味を活かしたイベントを経て、日常生活を恋と友情に溢れた青春の日々へと変化させていく。

 そして、大掛かりな王道イベントである学園祭の発案。
 学園祭の準備を進めながら触れ合う時間の中で、少しずつ開いていく過去の傷跡。

 闘争を経て、仲間の保持者達の未来を奪ってしまった【伊橋歩】の苦悩。
 自らの保持者としての能力で、意図せず多くの人を殺してしまった【小高柚月】の後悔。
 保持者としての欠陥と、自覚のない二重人格のような症状に苦しむ【土織キス】の哀傷。
 記憶を失う前は猟奇殺人者であったという事実を抱える【佐々木沙織】の困惑。

 ルルランと自分達を変えるため、苦しみながら、傷付きながら。
 ちはやは彼女の手を取り、この街の真実を追い求める。

 秋を繰り返した先の夢に辿り着く、その日を目指して。

 

ネタバレなしの感想

シナリオ     B+  前二作よりもラブコメの比重が大きく、心地良い塩梅

キャラクター B+  相変わらずのぶっ飛んだキャラ達

CG          A    絵師さんの進化が凄まじすぎる

音楽     B     BGMの切り替えが頻繁すぎてやや不快だったかも

総合評価   B+   個人的にはシリーズで一番好き

 

 前二作と比較して、ラブコメがかなり強化されました。個人的には好みなバランスだったので一番楽しめたのですが、はるくるやなつくるのような重厚なSFベースの物語を期待している方にはやや物足りないかもしれません。ちなみに、SF要素の難解さで言えばトップレベルでした。

 

ネタバレあり感想(一部はるくる、なつくるのネタバレあり)

 

共通 B+

 前二作と比べて、かなり私好みの雰囲気でした。量子力学ブコメディと銘打ってあるだけあって、SFと恋愛の比重が前作までと大きく異なっているように感じます。いつも通りの小難しいSF要素もしっかり基盤になっているのですが、その舞台設定の中で恋愛を主軸に展開しようとしている。先の展開への興味を引っ張るSF設定とラブコメが上手く同居しているなぁと思いました。先述のようにSFと恋愛の比重が前二作と大きく異なるため、今作は評価が二分しているみたいですが、私は圧倒的に賛です。

 ただ、コメディパート一つ一つの場面がやや冗長すぎるのは気になりました。せっかく先の気になる設定をしているのに、コメディに尺を割きすぎていてやや気勢を削がれてしまいました。コメディもこの作品の重要なテーマの一つなので、大事にしているのは分かります。ただ、それならそれで細かく切り分けて入れるなどの工夫が欲しかったところです。

 共通時点だとキス>みはや>歩>柚月>沙織>ノアの順で好きです。やっぱ巨乳に紛れる貧乳って最高だよな!な!

 

歩ルート B+

 歩に対する第一印象は「君、はるまでくるるにいたよね?」だったのですが、話を進めていくうちにこの印象が間違っていなかったことが分かってきました。もしかしたら、あえて静夏に似せた部分もあるかもですね。あちらもたしか静夏にリーダー適正があるという話だったと思うのですが、あえてキャラを似せることで「一人の人間に重責を背負わせることの残酷さ」を問うお話にしたかったのかなと。

 今作は恋愛の比重が大きいみたいなので、なつくもよりは大人しいお話になるのかなと思っていたけれど、全然そんなことはなかった。過去を変えようとしたり千切れた肉片を媒介にタイムリープしたり世界と同化したりと、やってることは分かるものの超展開の連続だったように思います。こういうぶっとんだ設定を活かした話づくりが四季シリーズだよなぁ。結構面白かったです。

 歩は可愛い幼馴染でした。少し舌足らずっぽい声とかコッテコテな幼馴染属性とか、たまらんです。やっぱり幼馴染って最強なんですよ。何で私の人生には幼馴染がいないんだろうなぁ。

 

キスルート B

 桐谷華最強!桐谷華最強!なルート。

 どうもこの作品、ギャグシーンが間延びしているような印象を受けます。なかなか話が前に進まない...。シリーズを重ねるごとにギャグの挟み方が下手になっているような気が。ギャグの質自体は上がっているんですけどね。なつくもはシリアスの中に無駄にギャグを挟むもんだから酷くだれていたし、今作では一つ一つのギャグシーンが長すぎる。キスルートでこれは顕著だったように思います。

 お話ですが、よく分からんというのが正直なところです。えっと...キスはウイルスで...一度暗黒期になってワスプに感染した?主人公にも感染しかけたけど主人公がワスプになってキスは主人公になった?何故か腕の一部が消えていて他の世界を認識できるようになった?土織さんはウイルスで人間が滅びるのを待っていた?

 

 ふーん、へぇ......なるほどね?????

 

 今作は何度も言うように恋愛とSFの比重が大きく異なっているのですが、SF部分の難解さは過去作と比べても群を抜いているなぁ、と思わせられるルートでした。現在が過去を決めるという設定は斬新で面白いんですけど、量子力学は直感で理解できないので上手く呑み込めない。ようやく理解したと思ったら斜め上の超展開が続くというね。いや、面白かったですよ。

 あと、キスちゃんはめちゃくちゃに可愛いんですけど、天邪鬼な部分が目立ちすぎてイチャイチャが少なかったのがやや残念です。

 

柚月ルート B

 共通時点で既にやばさの片鱗を見せつけていた去勢ノーパンさんルート。

 正直言って舐めてた。予想を遥かに超えたぶっ飛んだ展開が待ち受けていました。ワスプさんの前で全裸になるヒロイン、続くアナルセックス、そしてワスプさんが宇宙人だったとかいう衝撃展開...。これまでの四季シリーズは、あくまで現実の延長線上にある程度のSF(なつくもはファンタジーな展開でしたけど、あれは別宇宙へ行くための理屈を重力に交えて説明していたのであくまで科学の範疇といった印象です)だったので、純度100%なファンタジー設定が出てきたのはびっくりしました。だから、今でも正体が宇宙人というのは信じられないでいる....。

 柚月自体は可愛いですが、「~なの」という語尾が少し鬱陶しく感じてしまった...。擾乱の引金になってしまった負い目から可能性を閉ざす発言ばかりしていた柚月がワスプとの共存の道を探す=新たな可能性を模索するようになる、という構成は良かったです。ようやく前を向けるようになったんですね...。

 さおりん除く三人のルートの中で一番ぶっ飛んだルートでした。まぁ面白かったといえば面白かったのですが、これまでプレイしてきて薄々感付いていた「四季シリーズのノリが合わない」疑惑がはっきりしてしまった。はっきり言おう。

 

 私は四季シリーズのノリが好きじゃありません!!!!!!!

 

 いやね、気付かないふりして最後まで進めたかったんですけどね...。好みじゃないと分かっている作品を最後までやるって、モチベーション保つの大変ですからね...。

 まずテキストが苦手なんです。「あっ」とか「うあ~」みたいな感動詞が凄く多くて、それが好きじゃない。単語を狂ったように繰り返す演出も最初は面白かったですが、そう何度も多用されるとなんだかなぁ...と。下ネタだらけなノリもあんまり。ぬきたしみたいに笑える下ネタなら大歓迎なんですけど、そこまでハイセンスなわけでもなし。総じて私向けではなかったということなんでしょうね。ノリが合えばすごく楽しい作品だとは思います。シナリオ自体はすごく良く作りこまれていますからね。ノリが合わない私が三作目であるあきゆめくくるまで読み進められているのは、一重にシナリオの質の高さ故と言っていいでしょう。

 

沙織ルート A

 私服の着こなしがえぐい人。絶対伸びちゃってるよあの服。胸の部分だるんだるんだよあれ。

 正直びっくりさせられました。共通時点ではなんかやばい人だなとしか思ってなかったのに、こんなに可愛くなるなんて。主人公を好きになって、恋愛に傾倒していくようになる様子が可愛くて仕方なかったです。これもギャップ萌えみたいなもんですかね。ただの酒飲みおっさんじゃなかった。

 このルートでようやくだいたいの真相が明かされました。世界を終わらせたがっていたサトリが一番ラブコメをしたかった、というオチは予想できましたが面白かったです。主人公は同じ立ち位置の人がいれば僕じゃなくても好きになっただろう、みたいなことを言ってましたけど、私は違うなと思いました。サトリに頭を潰されなかったちはやには興味を持てなかったみたいですし、同じ存在だったからとかそういうのは建前に過ぎず、本当に心の底からちはやという人間に恋していたんだろうなぁと。この作品、要はめちゃくちゃ不器用な女の子のお話だったんでしょうね。沙織ルートでようやくサトリを正しく見ることが出来るようになり、一気に魅力的なキャラになりました。

 ルートの最後に幼年期のコスモス畑での問答のシーンが挟まっていましたが、あれってサトリルートの可能性という描写なんですかね?それとも隠されていただけで、全てのルートで通ってきた過去なんですかね?前者であることを望むばかりです。

 ここまでやってきてよかったと思える素晴らしいルートでした。

 

 

総評

 前二作と違いルート分岐方式になり、より恋愛が強化された本作ですが、負けず劣らず楽しめたとても良い作品でした。

 SFをここまで上手くラブコメに落とし込んだ作品も中々ないでしょう。どのルートでも量子力学にまつわる難解な設定が下敷きになっていますが、それらの設定を踏まえた上で、しっかりラブコメに帰結させられています。「なつくもゆるる」のりねルートをより煮詰めたみたいな。個人的に恋愛とSFの塩梅は今作が一番好きでした。

 ギャグが少し好みを外れていたので退屈気味だったという点はあるのですが、四季シリーズだと一番好きな作品だったと自信を持って言えます。

 ふゆくるも楽しみにしてまーす!

 

締め

 お金が無い。残高1万8千円。爪に火を点すような生活を続けている。このままでは娯楽が尽きて飢え死にしてしまう。現代人は娯楽も重要な栄養素なのです。定期的に摂取していかないと命に関わる。

 色々アルバイトを探してはいるんですけど、中々見つからず。四年生故に長く働けないから企業も欲しくない、よって中々見つからないのであって、決して私が無能でコミュ障で童貞だからではないです決して。童貞は関係あるかなぁ...。

 次のゲームは「涼風のメルト」です。これも一万円セールの時の積み残し。最近モンハンストーリーズ2を始めたので(臓器売って金に換えた)ペースは落ちると思いますが、気長にお待ちくださいませ。どうでもいいけど、発売から何年も経ったゲームのレビューを今更書くのって需要なさすぎませんか?もしかして気付いてはいけないことを気付いてしまったかもしれない。

 ではではー。