涼風のメルト レビュー

 ども。センヤです。

 今回レビューする作品はこちらでーーーーーーーーす。

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 10本1万円セールで買ったやつシリーズ、Whirlpoolさんの「涼風のメルト」です。

 ちょっと前にレビューを書いた「Pieces 渡り鳥のソムニウム」と同じメーカーさんですね。ただ、原画さんもライターさんも違うのでお話の雰囲気はあんまり似ていないかも。扱うテーマには割と似通っている点を感じますが。

 

 

 

あらすじとか(Wikipediaより引用)

 主人公、瀬川彰人の住む御代街には、古くから、土地神と精霊に守られたという伝説がある。今でこそその伝説を信じる人はいないが、その伝説に基づいて始まった土地神祭は、10年に一度、街にとっての一大イベント。今回の祭りは、瀬川彰人が祭りの神官、幼馴染の捺菜が代替わりする新たな巫女と決まり、彰人にとって、今までとは違う特別な祭りとなるであろうことは、疑いようもなかった。

 そんなある日、見たこともない生物を彰人が見かけたのをきっかけに土地神と出会い、その土地神から聞かされた話によって、彰人はこの街の真実の一片に触れることとなる。

 

ネタバレなしの感想

シナリオ     B+  個別で描かれたテーマがグランドへ収束していく優れたシナリオ

キャラクター A  幼馴染万歳!

CG          B    可愛いけど違和感のあるものも少なくない

音楽     B     印象には残らないがさりげなくお話を盛り上げる音楽

総合評価   B+   個別もグランドもシナリオゲーとして及第点な出来

 

 すごく良い!という程ではないですが、シナリオゲーとしてはまずまずの出来だったと言えます。とにかく描写が丁寧なのでお話にもいい具合に厚みが出ていました。

 ただ、長い。とにかく長い。それなりに良く出来たシナリオをもういいよ!ってくらいに丁寧に描いたお話なので、ボリュームはかなりあります。プレイする方は覚悟してください。そしてグランドまでは絶対にやってください。どうしてもきついなら、スキップしてしまうのも手かと思われます。いやスタッフの方に失礼なのでちゃんと全部読みましょう。

 

共通 B

 普通に面白かったです。としか言えないですはい。

 人物紹介と世界観の説明を軽く流して明るい雰囲気で進む、実にスタンダードな共通でした。ヒロイン達の可愛い一面も見られますし、主人公の人となりもしっかり描いてくれています。目を見張る何かがあるわけではないですが、テンポよく進むので退屈することもなく。基本に忠実で、模範的な共通だったと言えるでしょう。

 佳華がうざいという意見が多いみたいですが、私はそんなに気になりませんでした。確かに主人公たちを尾行していた辺りはどうかと思いましたけど、基本は気の強い女の子、という属性に収まる範囲で暴れていたので不快感はそんなになかったです。とはいえ見た目の問題で佳華はそんなに好きではないのですが。

 共通時点では羽衣≧捺菜>土地神>月音>佳華の順で好きです。私の大好きな属性である幼馴染を押さえつけて一番にのし上がった羽衣ちゃんがやべえ。めちゃくちゃ可愛いです。

 

羽衣ルート B+

 羽衣ちゃんと優衣ちゃんの姉妹の絆が感じられるルート。

 キャラゲーと思って読んでましたけど、結構お話も面白かったです。羽衣ちゃんとの恋愛と伝承探しを神具というファクターで繋げて、並行して進んでいったので、どちらの要素もだれずに楽しめました。溜めがやや弱くてカタルシスに欠けるところはありますが、ストレスなく読めるという長所とも言えるでしょう。全体的に緩急のついたシナリオで、構成の上手さが光るルートでした。

 あと期待通りに羽衣ちゃんが可愛い。可愛いんですが、どこが可愛かったかと聞かれると案外思いつかない。基本受け手に回る性格だったので、自分から何かをしたという記憶があんまりないですね。まぁその奥ゆかしさも魅力でしょうか。あと病人なのにセックスするのはどうかと思うよ羽衣ちゃん...。

 奇跡は想いと行動によって起こすもの。土地神様に願った結果、優衣の病気は回復したけれど、奇跡の代償として今度は羽衣が病気になってしまう。一度は失意に落ちた主人公たちだけど、神具を頼りに皆で解決の糸口を探し続け、羽衣が助かるという奇跡を授かることができた。ご都合みたいな奇跡が起きるとしても、それまでの過程には確かに意味があり、だからこそ奇跡だけに頼ってしまってはいけないのだと、そいういうメッセージを読み取りました。努力したものに与えられるのが奇跡なのです。

 

佳華ルート B+

 容姿があまり好きではない子。不快とか嫌いというわけではないけどあんまり食指の動かないタイプ。

 お話が結構面白く、ヒロインとのイチャラブよりそっちを目当てに読みました。まさか町長があそこまで外道だとは思わなかった。このルートやると他のルートでの町長の見方が変わってしまいますね。一番最初か最後にやるべきルートなのかも。

 玲於奈と関わりだしてからは常に展開が動いていてテンポが良かったですね。決着のつけ方も予想外だけど納得のゆくもので感心しました。ごまちゃんの能力がチートすぎるような気もしますが、まぁそこはご愛敬です。分かりやすい悪役がいてくれたおかげで、話に起伏がついていました。

 恵編もよく出来ていたと思います。この作品、長い時間かけて編み上げた主人公たちのドラマよりも、絆語の過去編の方が心揺さぶられますね。エロゲとしてどうなんだと思う気持ちもありますが、私はこういう悲恋や非業の死みたいな過去編が大好物なので全然おっけーです。

 一つ気になったのは、これ問題解決してなくないか?ってことです。玲於奈さんは記憶を失ったので帰っていくのは分かるのですが、町長は土地神の実在を疑ったままでしょう?だったら町長がその席についている限り、また同じことを繰り返すような気がするんですけど...。土地開発も完全に取りやめになったわけではないです。だったら、開発が再開されるときにまた土地神伝承との折り合いで悩むことになるでしょうし、そうなればまた玲於奈さんを呼んで調査させるんじゃないですか?その時もまた同じ対策をするつもりなんですかね...。町長の不祥事が発覚してその席を下ろされる、くらいはしてほしかったです。町長の企みは防いだものの、別に痛手を負ったわけではないですし...あれだけ強権的に主人公たちを追い詰めた敵に合わせる仕打ちとしては、やや物足りないものがあります。

 そもそも町長は巫女が森に入ることをどう考えていたのでしょうか?なんか知らんけど巫女は森から帰ってこないんだよなwくらいにしか考えていなかった?それは無理があるでしょう。倫理的にもアウトに近い巫女の風習を現代まで続けている理由が、「土地神の存在を信じているから」以外には考えられません。もし信じているなら、開発を進める理由がどこにあるでしょうか?超常的な力で街が発展していることを知っている町長が、土地神を森から追い出すような真似をしている理由がいまいち理解できませんでした。重箱批判ですかねこれ?割とルートの根幹をなす部分のツッコミどころだと思うのですが...。

 まぁ疑問点はどうあれ、話として面白かったのは確かです。佳華も思っていたよりは可愛かったです。

 

捺菜ルート B

 大好きな幼馴染属性ヒロイン。家が隣同士・窓を通じて部屋を行き来している・毎朝起こしに来て朝食を作ってくれる・可愛い。役満です。お手本のような幼馴染ムーブ。

 誰よりも時間を共にした相手だからこそ互いに大切に思いやっていて、その思いが「巫女の風習による関係性の変化」を前にして恋愛へと昇華する。納得のできる感情の変遷でとても好きなお話でした。幼馴染シナリオは、お互いに大切に思っているからこそ形成される優しい空気感が凄く好きです。ハラハラ感とかはないしくっついた後の関係性の変化にも乏しいものはあるけど、それでも幼馴染同士にしか作れない恋愛関係がある。

 想いは時代も距離も越えてつながっているよ!というお話。正直ボンタの能力関連は全く意味が分かりませんでした。ご都合にもほどがあるだろと言いたくなるシナリオでしたが、奈津の話は結構胸に響くものがありましたし、後味は良かったので嫌いではないです。キャラゲーとして見れば、何の後腐れもなくヒロインを祝福できるいいお話だったのではないでしょうか。いや、シナリオゲーとして見るなら論外に近いご都合具合でしたけど...。最後の最後まで他者の幸せだけを願って生きていた奈津を思うと泣きたくなる。もし予知夢に逆らっていたらもっと幸せになれた道もあったのかなあ、明人と再会できる未来もあったのかなあとか想像しだすともういけない。ああいう人の一生を書いたエピソードに弱くてなぁ...。

 というか、あんなにあっさり禁足地出られるんですね。あんまり簡単に出るもんだから拍子抜けしました。だったら他のルートでも絶対出られるでしょうけど、まあ他のルートだと近い将来精霊になって、主人公を助けてしまうでしょうしね。そう思うと捺菜以外のルートは素直に楽しめなくなる気がする...。全てのルートで捺菜が犠牲になっているってことだよね?

 

月音ルート C

 まず言いたいんだけどさあ、あの水着は何なんですか。際どいエロいのレベル越えて怖いよ。明らかにサイズ間違ってるでしょあれ。露出の多い水着とかじゃなくて一回り小さいサイズ間違って買った感じでしょあの水着は。尻完全に見えてるよね?なんですかあれは!!!!!!!!!

 このルート、主人公の行動に違和感があるんですけど私の気のせいですかね。なんかウィンクしだすしすげぇアグレッシブだしいけ好かないキャラになっているような...。ライター二人いますし、もしかしたらもう一人の方のライターさんが書いたルートなのかもしれませんね。正直違和感が凄くてお話に入り込めませんでした。

 気になったのが、告白シーン。個人的に、周りが見てる中で告白するシチュエーションが嫌いなんですよね...。告白は大事なイベントなんだから、二人だけの世界であってほしいし、二人だけがその場を知っていてほしい。そう思うのは私が恋愛未経験童貞だからですか?恋愛に純粋さを求めすぎですかね?でも、現実だって人前で告白する人はいませんよね。正直見ていて共感性羞恥起こしたのでやめてほしかったです。

 なんだかこのルートだけ色々と変だなあ、というのが第一印象でした。告白もこんなんだし、主人公はキャラ違うし、月音は天才設定が完全に消えてただの天然お嬢様になってるし...。極めつけはシナリオ。なんですかこの頭のおかしい打ち切り展開は?何も解決せずになぜか晴れやかな顔で幸せなキスをして終了...。いやいやいや、意味わかんないから!何ハッピーエンド面してるのこの人ら?何一つ解決しなかったよね?

 というか、月音のお母さんとの初対面シーンで巫女の正体を普通にばらしてしまってるんですけど、大丈夫なんですかね?確か儀式まで秘密にしなきゃだったと思うのですが...。やっぱり複数ライター故の弊害ですかね。

 

涼ルート B+

 グランドルート。個別で明らかになった謎や貼られた伏線、そして描いてきたテーマが全て収束する、正しく集大成といえるルートでした。

 前半は月音ルートの絆語で少し登場した風のお話。人の想いから生まれた風を否定するのではなく、受け入れて一つになる(溶け合う)という展開はこの作品らしい決着で良かったです。まさしく「涼風のメルト」ですね。ただ、一つになったという割にはそれ以降風らしい性格が微塵もなかったのが気になります。多少変化があってもよさそうなものですけどね...。風の見た目が好きだったので、もう少し出番が欲しかったなあ。

 後半からは秋人の過去編から始まって、彰人の呪いの話へシフトします。人の想いが伝承として今に受け継がれ、その思いを受け取った涼と彰人の物語はこれからも続いていく、という終わり方はこの作品らしくてすごく感動しました。全編通して人の優しさや想いに彩られた物語で、凄く心温まるストーリーでした。最後のご都合ハッピーエンドも、羽衣ルートで「努力したものに奇跡は起きる」と書いていたからこそ素直に納得できるものに仕上がっていました。ご都合を上手く取り込んだなあ。

 ただ、これまで描いてきた「人と精霊の共存」というテーマの決着を放棄した感は否めません。人と精霊≒自然と人間の発展は共存できるのだろうか?というこの作品の問いに対して出された答えが「最初から人と精霊は共存していたことになったよw」ですからね。つまり、共存できるだろうか?という問いかけが存在してしまっている時点で共存なんて無理だよ!と言っているようなもんじゃないですか。いやいやそんな結論でいいのか。描いてきたテーマや過程はそれなりに良かっただけに、結論部を放棄したのがもったいないです。私はこれが結論だとは思いたくないな。お互いが歩み寄ればきっと人と精霊は共存できる。そう思いたい。

 

総評 B+

なげぇ!!!!!!!!!!!!!

 いやいや長すぎるよこのゲーム...。共通+個別だけでも並のフルプライスくらいあるのに、各個別ごとにある絆語があるせいで余計に長い。ここまで長く感じたゲームはホワイトアルバム2以来でしたよ...。

 一つ一つを丁寧に描きすぎているせいでだれたように思います。過去編なんてもっとサラリと流してもいいのに、馴れ初めから何まで全ての仔細を描くもんだからやばい。ようやく終わるか→終わらんのかい!が2億回はあった。

 とはいえ、そのボリュームに見合うくらい良いお話ではあったと思います。見せ方に問題があったというか、見せすぎたのは問題ですが...。シナリオ自体は質が良いのでなんとか終わらせることができました。やってよかったと思える作品でした。

 一つ気になったのは、康介をもうすこし救ってやってほしいということですね...。ぞんざいに扱われすぎて少し可哀想でした。いいやつなのに。

 

締め

 ワクチン打ってきました(唐突)。大学で無料で打てるということだったので、モデルナを我が肉体に注入致した次第です。

 まだ一回目ですが、37度の微熱が出ました。あと打った左腕が上がらなくなった。副反応楽しんでやるぜ!みたいなノリでワクワクしてましたが、思いのほか辛くなくてがっかりしました。二回目がきついらしいのでそっちが本番ですね。

 まだまだコロナ禍収束の兆しは見えませんが、まぁ自分達にやれることをやっていきましょうじゃありませんか。具体的には家に引きこもっておちんちん触ってください。

 次回はかねてよりプレイしたいと思っていた「遥かに仰ぎ、麗しの」のレビューを書くと思います。まぁまだ買ってないんですけど。残高1万3000円なり。