月あかりランチ レビュー

 ども。いよいよ学生生活が殆ど終わったセンヤです。

 内定先から届いた研修用教材から目をそらしつつ今回レビューするゲームはこちら。

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 今は亡きEX-ONEさんの「月あかりランチ OZ sings, The last fairy tale.」です。

 巷では隠れた良作と噂の作品です。デザインはかなり今風だと思うのですが、2013年発売らしいです。2017年くらいだと思っていたのでびっくり。

あらすじ(Wikipediaより引用)

目を覚ますと見知らない夜の教室に居た。

すると、少女に銃を突き付けられ「あなたは誰なのか」と問われるが、記憶がはっきりせず名前と職業を思い出し、志貴晴彦と名乗る。

少女たちも晴彦と同じく深夜の学園・「星影学園」にいつの間にか来ていたと言う。 違う世界の少女たちを元の世界に帰すには少女らの「願い」を叶えなくてはならないらしい。

そして晴彦は「俺がお前たちの願いを叶える、オズの魔法使いだ!」と高らかに宣言すると、学園に明かりが灯り始める。

 

ネタバレなしの感想

シナリオ     B+   余韻の残る良い感動シナリオ

キャラクター A     ヒロインだけでなく敵役も魅力的

CG          B     可愛いデザインだけど、一部構図やデッサンの狂いあり

音楽     A     落ち着いた曲調多めで雰囲気にぴったり

総合評価   B+     あと一歩で名作足り得た作品

 

 面白かったです。魅力的な世界観をしていて、どのルートも最後には優しい感動が待っています。ただ、少しボリュームが足りない気がします。そのせいでキャラゲーにもシナリオゲーにもなり切れなかった印象があります。感動も萌えもあります。けど、どちらかに特化させた方がより良い作品になったんじゃないかなあ、と思わずにはいられません。批判気味な感想になっていますけど、とても良い作品でした。もうすこし尺があればな...。惜しいです。

 

ネタバレあり感想

プロローグ A

 という名の共通パート。初回起動時にノータイムで始まったからすぐ終わるのかと思ってたけど、めちゃくちゃ長かった。

 共通としては中々良かったんじゃないでしょうか。夜が終わらない学園に閉じ込められた少年少女、影という敵の存在、魔女、忘れてしまったかなえたい夢、そして主人公は皆の夢を叶えるために教師になる...。一つ一つの要素は結構ありがちですが、それらを上手く組み合わせて面白い設定に作り替えたのは素晴らしいですね。ワクワク感があって先の展開に期待を持たせる、良いスタートだったと思います。

 ヒロイン達が別の世界からやってきたという設定も上手いです。皆それぞれ異なる価値観や常識を持っていて、だからものの見方一つとっても感じ方が変わってくる。そこから生まれる軋轢なんかも描いていて、上手く扱えるなら面白い設定だなあと感じました。凄く難しそうですが。

 共通時点ではアキ>アブリル>夏乃>フユの順で好きでした。とはいえ殆ど差はありません。皆可愛くて魅力的な人物でした。主人公とハルも良い。サイトウケンジさんが総指揮を務めるという時点で予想できていましたが、主人公に全く不快感が無いのが好印象です。読んでいて全くストレスがない。内面では他者とのすれ違いに苛立ちを覚えたりはしますが、それは主人公の人間味を出す描写として機能しています。それに、苛立ちを表に出す前にしっかり考える。本当にその苛立ちは正しいのかと。その上で相手の意を汲んで理知的な対応をするのですから文句なしです。全ての主人公がこうあってくれと願わずにはいられない。キャラゲーのスタンダードになりうる人物像だと思うんですけどね...。

 

フユルート B+

 戦争が絶えない世界からやってきた合理主義の具現化みたいな女の子。

 最初は価値観の相違故の衝突が多かったためなんだこいつ状態でしたが、少しずつ打ち解けてきて感情を見せ始めるようになると凄く可愛いヒロインになりました。好意を直球でぶつけてくるのが可愛くて仕方ない。ヒロインの魅力を最大限に引き出してくれるキャラゲーとしては満点近いお話でした。しかしイチャラブが少し足りねえ...。学園内しか行動範囲がないので、どうしてもイチャラブのシチュエーションが限られたものになってしまうんですよね...。

 終盤のシリアスパートもそれなりに楽しめました。魔女とも仲良く過ごしていたため若干緊張感に欠けたような気はするのですが、それもまたこの作品の味でしょう。私は好きです。

 それと、話の流れ的に妥当ではあるのですが、別離でお話が終わってしまうのが辛い。フユはこれからも戦闘の絶えない世界で生き続けるわけですしね...。心を持ってしまっただけにこれからの殺しは更に苦しいものになるでしょうし。主人公もいない世界で生きていくというのが辛すぎる...。いや、ED後の会話を見るに個別シナリオは可能性の一つ?夢?みたいなものなのかもしれませんけど(基本的に一人攻略完了するごとにブログを書いているため、フユルート感想を書いている時点では後の展開を知らないです)。

 

夏乃ルート B

 べんきょー大好き系ロリっ子ヒロイン。

 話としては結構面白かったとは思うんです。けど、夏乃が無自覚に好意を持ってから恋を自覚し、告白するまでの展開が駆け足すぎるように感じました。その後の展開も矢継ぎ早に進んでいきます。中だるみが無いのは良いんですけど、もう少し丁寧にやっても良かったんじゃないかなぁと思いました。付き合い始めた時点でもう寿命が明示されていたので、ただのイチャラブにそれ以上の意味が生まれてしまった。純粋に可愛さを楽しむだけのイチャラブというのが殆どなかったのが勿体ないです。どうもしんみりしてしまう...。

 「最後の瞬間までこの学園で勉強していたい、そして永遠の眠りの中で幸せな夢を見たい」という夏乃の想いが、主人公との対話を経て「生きて今よりも技術を身に付けて、異なる世界を行き来できる奇跡を自分の手で起こせるようになりたい」という想いに変わる。後ろ向きだった「夢」が前向きな意味での「夢」に変わるというのが綺麗な流れで好きでした。とはいえ、独断で卒業させようと考えていた主人公の思考には少し引っかかるものもあるんですけどね。教師は自立を促す立場ではありますが、手を引いて強引にレールに乗せるような存在であってはいけないでしょう。教師としての意見を夏乃に伝えた上で、夏乃に道を選ばせるべきだったと思います。

 それと、勉強しかすることのない世界に住んでいて本人も勉強が大好きなのに、成長期すらも知らないのは何故なんですかね...。色々知っているはずなのに何も知らないみたいなキャラ付けになっているのはなんというか、ちぐはぐ感があります。でも元気溌剌な夏乃の笑顔には癒されました。ヒロインとしては夏乃は好きです。かわいい。

 

アブリルルート B+

 お姫様騎士系ヒロイン。私が許容できる上限ギリギリの巨乳さんです。つまりはまぁ、大好きです!

 アブリルが逃げるくらいなら死にたかったと言った時に手を出した主人公を見て、なんか違うなと思ってしまいました。彼は一時の激情に駆られて衝動的な行動に出てしまうような人物ではなかったはずです。同じような状況だったフユとの衝突時も、湧き上がった怒りをそのまま吐き出す前に内省して、相手の理解に努めていました。そうやってワンクッション置いて行動できる人物だったはずです。それに比べると、このルートの主人公は直情的すぎる気がします。多分ですけど、このルートのライターはサイトウケンジさんではないのでは?サイトウケンジシナリオの特徴として、ツッコミ時に「!?」と?を加える傾向にあります。これは他ライターの作品ではあまり見られない表現なので分かりやすい。これがアブリルルートにはなかったので、多分違うんだろうなあと。

 このルートでは一応全員が卒業できました。学園での楽しかった記憶を精神的な支えにして元の世界を生き抜く、という結末は他の個別ルートでも提示された結末です。それを考えると、このルートはヒロイン全員がそれなりに幸せな結末を迎えたのではないでしょうか。むしろ、愛する人と離れ離れになったアブリルが一番辛い終わり方だったかもしれません。

 しかしあれですね。三連続で離別エンドを食らわされるとどうも食傷気味というか...。離別に付随する切なさや寂しさというものがあまり感じられなくなってきた気がします。慣れてきたのかな。とはいえ、アブリルも可愛かったですし、良いルートだったと思います。

 

アキルート A

 理解のある嫁みたいなポジションにいつもいる子。

 この作品の終章的な位置づけも含んでいますが、だからといってアキとの恋愛がおざなりになっているなんてこともなく。丁寧に描いてくれてました。その分他のルートよりは長めだったので、ややだれた感は否めません。

 終章に入るとグッと面白くなりました。謎が殆ど全て明かされて、一気に話が動き出します。ベタですけど、卒業式から結婚式の流れも凄く良くて、泣きそうになりました。

 心的な支えの重要性を分からされるお話でした。主人公はもう死んでいて、元の世界にはいないかもしれない。けど、主人公と共に生きた時間は確かにあったし、今も各々の心の中に生き続けている。学園で生活した時間は一瞬だったけど、いつまでも思い出せる。だったらそれは別れじゃない。過去も現在も未来も同時にあるのなら、死は別離にはなり得ない。完全なハッピーエンドという訳ではないですけど、全員が前を向いて生きていけるような素敵な終わり方だったと思います。エピローグ的に、もしかしたら再会できたのかもしれませんしね。

 

総評 B+

 全体的に構成が尖ってるというか、粗削りな印象を受けました。

 起伏が少なく、ちんたら読み進めているうちにいつの間にか話が終わってるような感じ。恋愛の描写は足りないし、敵がそんなに悪い人達ではないので緊張感がなくてシリアスにもなりきれない。キャラゲーにもシナリオゲーにもなれずに終わってしまいました。

 けど、世界観は魅力的でしたし、キャラも皆個性的で良く出来てる。特に、異なる価値観を持つ生徒たちと交流して普遍的な正しさを説いていく、という設定は面白いと思いました。話が動き出してからは楽しめる展開もいくつかありましたし、終章でしっかり物語を締めてくれています。完全な大団円ではない分、余韻の残る作品に仕上がっていました。

 佳作みたいな評価に落ち着きましたけど、読みやすいしボリュームもちょうどいい量なので万人におすすめできる作品です。

 ところで、ランチタイムって結局何だったんでしょうか?何を思ってこんな危ない時間帯を作ったんでしょう...。バッドルートで解説していたりするのかな。そちらは読んでないですすみません。

 

まとめ

 もうだいぶ寒くなりましたね。冬だァ。部屋に備え付けてある20年ものの暖房が悲鳴を上げているので多分もう壊れます。こわい。人類はいつの間にか、暖房がないと生きていけない軟弱な生き物になってしまったのです。

 卒論も提出し、大学の教育課程を完全に終えたので、あとはもう遊ぶだけ。と思った矢先に内定者研修で白目になりながら生きていますが、僕は元気です。

 そろそろ萌え一直線な脳死キャラゲーを挟みたいので、次は「花色へプタグラム」をやろうと思います。現実逃避にはキャラゲーこれ鉄則。

 ということで今回はここらへんで。ではでは。