景の海のアぺイリア レビュー

 どもども。前置きもほどほどにセンヤです。

 そろそろ日常が忙しくなりつつもガッツリやりこんだ今回レビューするゲームはこちら。

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 シルキーズプラスDOLCEさんの「景の海のアぺイリア」です。景をひかりと読むのはこの作品で初めて知りました。エロゲで漢字、学んでいこう。

 これは有名な作品ですね。近年最も評価されたエロゲの一つと言っていいでしょう。期待値マックスでやっていきます!ました!

 

 

あらすじとか(公式サイトより引用)

 名前も顔も居場所も知らない。

 実在するかさえ分からない。

 お前を必ず見つけ出す━━━

『このメールは未来から送信されている』

 2045年冬。双葉学園萌えるAI研究会に所属する桐島零一は、偶然にも自我のある人工知能アぺイリアの開発に成功する。

 触れてみたい、とパソコンの中の彼女が言う。

 零一はAI研究会の部員たちと共に、デジタルの彼女に触れる方法を模索する。

 そしてアぺイリアの機能を使い、完全没入型VRMMO【セカンド】を作った。

 剣と魔法、科学の融合したその仮想世界は、第二の現実で、彼らは馬鹿騒ぎをしながら冒険を始める。

 だが、【セカンド】は制御の利かない危険なゲームだった。

 仮想世界に囚われたアぺイリアを救うため、零一たちは命がけでログインするのだが......

 自我を持った人口知能と彼女を開発した零一。

 そしてその仲間たちが贈る、恋と青春の科学冒険ファンタジー

 ━━━やがて彼は、一つの仮説に辿り着く。

 アぺイリアを奪おうとしている、何者かの存在に。

 

ネタバレなしの感想

シナリオ     A     ミスリードと反転を重ねる緻密な物語

キャラクター B+   アぺイリアはポジティブです。あとシンカー

CG          B+   質は高いが立ち絵との差異が少し目立つ

音楽     B      数が少ないような印象。ミスマッチなシーンが多かった

総合評価   B+    良く出来たシナリオ。ただ、好みじゃなかった

 

 悪くない!いや面白い!本当に面白かったんです。ただただ好みじゃなかった。

 常に先が気になる展開の連続で、テンポは最悪ながらも一切だれず。CGや演出もかなり頑張っていたし、魅力的なキャラクターも多い。結の部分があっさり過ぎる点を抜けばほぼ文句なしとも言える。でも、私の好みじゃなかったんです。それだけ。

 SF×下ネタ×タイムリープ。少しでも興味を持ったのなら、体験版をプレイしてみてください。後悔はしないです。

 

ネタバレあり感想

共通 B+

 なぜかあんまりうまく入り込めませんでした。

 面白くなかったわけじゃないです。自分達で作ったゲームがデスゲームになるという展開もワクワク感があって良いですし、AI、VR、クローン、タイムリープ量子力学とSF設定てんこ盛りなのに上手い塩梅で調和がとれているのも凄いと思います。シンカーとの頭脳戦もお互い切れていて緊張感がありましたし、予想外の展開ばかりでだれることもありません。特に物語における障害の置き方が上手く、常に先が気になるような作りになっている点も良い。下ネタ全開なバトルも下らな過ぎて笑える。中には感心するレベルのハイセンス下ネタもあったり。ハイセンス下ネタとは?

 それでもなんというか、胸を張ってめちゃくちゃ面白いと言えない自分がいます。全体的に「ぼくのかんがえたさいきょうのおはなし」を見せられている感が強いのが原因かなあ。シナリオに感情的な肉付けをしていないようなイメージ。主人公が浮世離れした頭の回転しているせいで、シナリオに動かされている感が強いです。特に何のバックボーンもない普通の人間のはずなのに、あまりにも有能すぎる。学生らしい若さや甘さが全然ない。ヒロインやサブヒロインたちも、命が関わっているとはいえあっさり身体を許すし。ブックマンもノータイムでおちんちん出しやがる。もう少し葛藤があってもいいと思いませんか?確かに絶印するしかないとは思うけどさあ...あまりにも合理的すぎないか?

 私は感情で動くキャラが好きです。完全に正解とは言い切れない行動を、それでも選択してしまう未熟なキャラを見ると、血の通っているのを感じます。この作品のキャラはあまりにも合理的すぎた。誰も不正解を選ばない。結果的に失敗だったとしても、常に現状における最適解を全員が出している。シナリオに、感情優先の進行が殆どないんです。だからどのキャラも記号的に感じてしまい、結果的にただ「面白いシナリオ」を見せられている気分になる。「物語」を読んでいる気がしなかったです。これだけ多くのギミックを盛り込んだ作品をテンポよく進めるには、キャラを有能にさせるしかないのでしょうけれど。

 つまりはまあ、単純に私の好みじゃなかったってことです。お話の面白さだけならA+でもいいのかもしれない。

 ヒロインはアぺイリア>ましろ>三羽>久遠の順で好きです。アぺイリアが頭一つ抜けて可愛い。

 

三羽ルート B+

 ツンツンツンデレ。ツン成分がかなり強い妹ちゃん。

 正直三羽はそんなに好きではないですね...。何事も否定から入るタイプの子で、見ていてあんまり気持ちのいいキャラではなかったです。けど、読み進めていくうちに慣れていって、素直に可愛いと思えるようになりましたね。まあ、思えるようになったころにはお話が終わったんですけど...。

 テーマは「実存」とか「生きるとは?」とか。本質に囚われてはいけない。アぺイリアはAIかもしれないけれど確かに生きているし、三羽はクローンだけど零一の妹でもある。そして、三人は血が繋がっていなくても確かに家族だった。大切なのは血のつながりだとかデータの集まりだとかそういう本質的なものではなく、自分達がどう思いどう生きていきたいか。そういうお話でした。三羽の母はそれに気付けなかったんですね...。最後まで自分の娘であることにこだわっていました。

 クローンものの物語を読んでいてちょっと考えることがあります。法律でクローン製造を禁止するのは勿論ですが、それに加えて「クローンに対する保護」を法律で制定するべきではないだろうか、ということです。

 法律は完全な拘束力足り得ないのは現代を見ても明らかです。いくら厳罰化したって、殺人は絶えませんし薬物取引は横行しています。クローンだって、法律で縛ったところで水面下で作る人が出てくるでしょう。絶対に。

 例えば薬物中毒者が逮捕された場合、薬物依存症からの回復に向けた治療や支援を受けられます。それと同じです。アフターケアが必要です。クローン犯罪が起きた場合、産まれてしまったクローンに対するサポートが必須でしょう。そしてそれを明文化することが必要です。自分がクローンであると名乗りを上げられるように。クローン製造は法律で禁止したのだからクローンが産まれることは想定していない、じゃ済まされないのです。この手のクローンものの悲劇にとどめを刺しているのは、法整備をしない社会だと思いますね。とまあ、SFに何言ってんだという考察を挟んでしまいました。すみません、ここは景の海のアぺイリア三羽ルートの感想です。

 

ましろルート B+

 やばばな後輩系女の子。なんというか...おっさんが考えた若者みたいなキャラしてる

 個別ルートはどれも発生する強制クエストが違うみたいですね。ルートごとに異なる駆け引きが展開されるので飽きない楽しさがあります。対戦カードも色々分けられているようですね。まあ、主人公のバトルは誰相手でもノリが変わらないですけど...。自分のフィールドに引き込めたら勝ちというボーボボみたいなバトルしてる。

 テーマは勇気ですね。自分の生き方の枠から一歩踏み出す勇気。最初は自己否定してばかりで臆病だったましろですが、最後には自分の身を投げ出してまで零一を助けようとする勇気を見せた。ましろの成長が感じられる良いお話でした。主人公の生き方を否定しない考え方も素敵。

 個別はラストでいくつかの謎が明かされていくようで、言ってしまえばそれだけが個別シナリオの本筋における価値の全てなんだと思います。個別で情報を小出しにして、グランドルートで全て回収してゆく構成。要は布石ですね。なんであんまり語ることもなかったり。いや、面白いんですけどね。

 

久遠ルート A

 中二病系幼馴染なお姉さん。

 お通夜の日にくっついてイチャイチャするのはどうなんだ...?いや、本人たちがいいならいいんですけどね。素直に祝福できない自分がいる。

 ラストバトルの零一はサードの身体なのに何で死んだんだろう?元気な身体が使えるんだから、ダカーポも使えるのでは?とか思ったものの、まあ細かいことは考えないようにします。零一が死んでいる間のやりとりは凄く良いシーンでしたしね。

 このルートは一番人間賛歌みたいなお話でしたね。論理的な思考では割り切れない不合理さこそが人間の持つ唯一性であり、最も尊いものであるという話でした。

 よくよく考えれば、アぺイリア自体がスワンプマンに近いです。雷によって生まれるというあたり、わざと寄せているようです。どのルートでもアぺイリアが作られますが、各ルートで作られたアぺイリアは全て同一人物だと言えるでしょうか?作り方も記憶の受け継ぎ方も何もかも同じですが、どのルートでも、ルートが始まってから作られているんです。これはスワンプマンと同じ構図になります。しかし、私は全てのアぺイリアが同一人物だと思っていますし、実際全てのアぺイリアを同一視していました。何故かって言われると難しいですが、強いて言うならば「同一人物であってほしいと思っているから」でしょうか?こういう感情に任せた不合理な思考が出来るということが、人間と自我を持たないAIとの最大の違い。

 ぶっちゃけ言うと久遠はそんなに好きなヒロインではなかったのですが、一番感情を揺さぶられたルートでした。やっぱり感情が表に出るようなお話が好きですね。

 

アぺイリアルート B+

 つよつよAI系ヒロイン。アぺイリアにオーナーと呼ばれたいだけの人生でした。

 展開が目まぐるしく変わってゆくのでついていくのが大変だった...。凄く具体的に仮説を説明しては全く違う回答が提示されるの繰り返しだったので、もう何が本当で何が間違いなのかが分からない...。いやだいたいは分かったんですけど、全容を理解できた自信はないです。

 目が離せない展開が続いて大変面白かったのですが、壮大なスケールの物語にしてはかなりあっさりと終わったので、正直拍子抜けしました。これって、ものすごい低乱数を引いてしまったっていうお話ですよね?ファーストがあのままならまたアぺイリアが生まれるのでは?というかアぺイリアネットワークはどうなった?零一たちはどこに住んでいるんだ?色々放り投げて終わったような気がするんですけど...。

 このルート一番の見どころはやはりシンカーとの決着でした。最後の瞬間だけは真に零一になれたシンカー...かなりグッとくる最期だった...。この作品で一番好きなキャラでした。ところでシンカーの能力のコストって何だったんだろうか?詠唱?いまいちわかりませんでした。

 結局この作品はスワンプマンのお話でした。現実を限りなく忠実に再現したファーストだって、スワンプマンの一種だと言えるでしょう。私たちが今いるこの世界だって、本当に仮想現実ではないと証明できるものは何もない。けれど、私たちはこの世界で生きているのだし、私たちにとってはこの世界だけが唯一の現実。今いる世界で自分らしく生きること。それが大事なのだと思わされるお話でした。

 

総評

 面白かった。けど、話の作り方が私好みではなかった。それに尽きる。

 針の糸を通すような緻密なシナリオ設計は確かに凄まじいものがあります。ここまで繊細なお話は見たことがないですし、これだけ好き放題しながらしっかり技術特異点というテーマを一貫して描いていた点も良かった。けれど、シナリオに血が通っている気がしなかった。

 結局零一があそこまで賢かった理由付けはなかったですよね?一介の学生がたどり着ける知性の限界を越えてます。零一はシンカーシステムを使っていないのにシンカーと対等の頭脳戦してるのはおかしくないですか?零一の行動にはライターの影が見えてしまって、素直に魅力ある人物とは思えませんでした。お話を動かすために都合よく賢くなっているような感じ。

 まあ色々言っちゃってますけど、面白かったのは間違いないです。私の好みじゃなかっただけ。本来ならA+つけてもいいくらいにはエンタメ全開でした。

 

まとめ

 いよいよ卒論制作が本格化してきました。夏休み中ずっとサボっていたツケを今払わされています。しんどい...。

 来月には入社式だし。歴戦の猛者みたいな顔した父が「この先(業界)は地獄だぞ」ってアーチャーみたいなこと言って脅してくる。遅いよ!今更言われても何もできないよ俺には!まあ、いいんですけどね。仕事なんてどうでも。

 次は多分、「Rewrite」をやるかなあ。ちょっと気になってるんですよね。卒論もあるので、当分は更新ペースが落ちると思われます。ではでは。